狼塚古墳の囲形埴輪(No.99)

更新日:2013年12月20日

狼塚古墳の囲形埴輪出土状況

今回は、藤井寺市から出土した囲形(かこいがた)埴輪を紹介することにしましょう。
この埴輪は、史跡大鳥塚古墳の東隣の発掘調査で見つかった小さな円墳から出土しました。調査を始めるまで、ここに古墳が眠っているとは分かっていませんでした。もっともこの辺りは、古墳の集中しているところなので、新たな古墳が見つかることも予測はしていました。
調査開始まもなく、埴輪の破片や葺石に使ったと見られる川原石が出てきて、古墳の可能性が強まりました。調査の進展にしたがって、この古墳は直径28メートルの円墳で、西側に「造出し」と呼ぶ突出部をもつことが分かってきたのです。古墳の名前は小字名をとって「狼塚(おおかみづか)」としました。
さらに注目されたのは、造出しの北西側の、やや低まったところに平坦面をつくり、そこにこれまであまり類例の知られていない囲形埴輪を据えていたことでした。囲形埴輪は、8つの箱形のパーツを組み合わせていました。一辺につき、2つの箱を直列させ、1.2メートルの範囲を四角く囲っていたのです。囲った内部は、小ぶりの川原石が敷き詰められていました。その上に凹みをつけた羽子板形の粘土板、明日香の酒船石をほうふつとさせる奇妙な土製品が置かれていたのです。
一体これは何を模した埴輪なんだろうか。資料検索が始まりました。もともと囲形埴輪自体がもう一つよく分からない謎の埴輪といわれていました。上部にギザギザが表現されていて、四角く囲みを作っていることから、塀のような施設を現しているというところまでは分かるのですが、それが何の施設なのかはよく分からなかったのです。
兵庫県の行者塚古墳では、囲形埴輪の中に家形埴輪を納めた状態が見つかっています。何かのまつりを執りおこなう建物と、その聖域を表現していると理解できますが、そのまつりの中身までは手掛かりがなかったのです。
ヒントは羽子板形の土製品でした。奈良県南郷大東遺跡などで見つかっている浄水祭祀場に注目したのです。水を引き込む木樋の凹みがこの土製品にそっくりだったのです。
囲形埴輪と呼ばれるすべての埴輪が浄水祭祀場を表現しているとは断定できませんが、かなりのものがそうであろうと考えられるのです。
狼塚古墳の囲形埴輪の発見によって、この埴輪の謎解きが大きく前進したのです。

写真:狼塚古墳の囲形埴輪出土状況

『広報ふじいでら』第349号 1998年6月号より

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