水鳥形埴輪のモデル探し1(No.113)

更新日:2013年12月20日

津堂城山古墳出土の水鳥形埴輪の展示風景

今、手元に1通の手紙と資料が送られてきました。栃木県の賀来孝代さんからです。かれこれ1年以上待っていた手紙でした。
賀来さんは鳥が大好きで、バードウオッチングから始まって、今は鳥の埴輪が大変気に入り、全国の資料を収集しているかたです。
鳥の埴輪研究では、津堂城山古墳の水鳥形埴輪はどうしても実際に見ておきたいと、藤井寺を遠路訪れられたのです。昨年(平成9年)の2月のことでした。
事前に国立歴史民俗博物館の佐原眞さんから「鳥の専門家をうかがわせますので、よろしく。期待してください」との電話がありました。何を期待するのですかとうかがったのですが、佐原さんは「まあまあ」とおっしゃるだけで要領を得ないままになってしまいました。
彼女が藤井寺に到着後、一緒にアイセル シュラ ホールに向いました。もちろん城山古墳の水鳥形埴輪との対面が目的です。それからの小1時間、まるで昔の恋人にでも出会ったかのように観察をされていました。城山古墳の水鳥を見に来られた研究者はたくさんいましたが、こんなにうれしそうに見ていたのは彼女をおいていませんでした。彼女の目は、埴輪という作品を突き抜けて、モデルとなった鳥そのものを見ていたのかもしれません。
城山古墳から出土した水鳥形埴輪は3体あって、うち2体が高さ1.1メートル弱と大きく、1体が80センチと小さいのです。この大小の違いはなんだろうと考えていました。ある大学の高名な鳥類研究者にコメントを求めたことがありました「ガンカモ科の水鳥には違いないですね」いろいろうかがったのですが、最終的にこれ以上踏み込んだコメントをいただくことはできませんでした。
もんもんとしたまま、ある学術雑誌に大きい水鳥形埴輪はコハクチョウを模したものであろう。しかし、小の水鳥は、コハクチョウの幼鳥、あるいは種の違うガンカモ科の水鳥、いずれかを表したものだろうと発表したことがありました。
このふぬけたような結論は、彼女も知っていて、質問攻めにあいました。大きい水鳥形埴輪がコハクチョウをモデルにしていることは、プロポーションや大きさからかなり自信があったのですが、小さい方は、からっきしで、ほとんどお手上げだったのです。
すぐにこの弱点が見破られたことは言を待たないことでした。となれば、せっかちな大阪人の常、はやく彼女の意見を聞きたいと思ったのですが、彼女も慎重で「もう少し調べて、ご連絡したいと思います」とのことでした。

写真:津堂城山古墳出土の水鳥形埴輪の展示風景

『広報ふじいでら』第363号 1999年8月号より

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