旧石器時代の石器の見分け方は(No.55)

更新日:2013年12月18日

岡古墳の盛り土から出土したサヌカイト製の旧石器です

質問の二つ目は、小学校6年生の男子から、「旧石器時代の石器というのは、どうして見分けるのですか。ただの石のかけらに見えるのですが」という疑問です。
確かに難しい問題です。たとえば、矢じりのような石器は、いかにもそれらしく誰の目にもヒトの作った作品であることが分かるでしょう。ところが、展示しているナイフ形石器と呼ばれる石器になると、疑問を抱く人が出てきます。
旧石器時代の石器の認定をめぐっては、古くから学者の間で幾多の論争があり、その一部は現在も続いているのです。自然の作用であたかもヒトが作ったような形になった石(エオリス)ができることもあるのです。
つまるところ、石器かどうかの判断は、

  • 石質
  • 作り方に一定の規則性が認められるかどうか
  • 同じ作り方をした石器がいくつも確認できるか
  • そうした石器が一定の範囲に広がりをもっているのか、といった条件を調べることが必要になるのです。

まず、石質ですが、日本の後期旧石器時代を例にとれば、石器の材料には、非常に堅く、ガラスのような性質をもった石が選ばれています。九州・山陰では黒曜石(こくようせき)、瀬戸内海沿岸ではサヌカイト、中部・関東では黒曜石、東北では頁岩(けつがん)、北海道では黒曜石といったように、地域によって違う石材を用いています。これらの石材の産地は限られており、その周辺に文化圏が広がっているのです。
たとえば、関東平野は、関東ローム層と呼ばれる火山灰が厚く堆積しており、黒曜石はおろか軽石以外の石を見つけることも困難な土地がらなのです。ですから、関東ローム層から黒曜石が見つかれば、ヒトによって運ばれてきたと考えるのが自然なのです。事実、関東ローム層から出土した黒曜石製の石質を鑑定すると、長野県産の黒曜石であることが多いのです。
つまり、その地域でとれない石が見つかれば、石器の可能性が出てくるのです。ところが、藤井寺のようなところでは、近くに二上山というサヌカイトの大産地があるので、サヌカイトが地中から出てきたからといって、それだけでは石器であるとはいい切れないのです。現在でも石川の川原石を観察すると、サヌカイトの自然の礫をいくつも見つけることができるからです。
ですから、藤井寺から出土したサヌカイトを石器と認めるためには、ほかの条件を満たすことが必要になってきます。

写真:岡古墳の盛り土から出土したサヌカイト製の旧石器

『広報ふじいでら』第305号 1994年10月号より

お問い合わせ

教育委員会事務局教育部 文化財保護課
〒583-8583
大阪府藤井寺市岡1丁目1番1号 市役所6階65番窓口
電話番号:072-939-1111 (代表)
072-939-1419 (文化財担当、世界遺産担当)
ファックス番号:072-952-9507

みなさまのご意見をお聞かせください
このページの内容は分かりやすかったですか。
このページは見つけやすかったですか。