柴犬の先祖は縄紋犬?(No.57)

更新日:2013年12月18日

代表的な日本犬 柴犬

小学校5年生の女の子からの質問です。「わたしの家には、ナナという2歳の柴犬がいます。柴犬の先祖は、縄紋時代の犬だとお父さんがいっていましたが、本当でしょうか」
お父さんの答えは正解です。柴犬は在来の日本犬の特徴をよく残している犬として、昭和12年に国の天然記念物に指定されているのです。柴犬のほかの日本犬では、秋田犬、紀州犬、甲斐犬、北海道犬、そして四国犬が指定されています。
縄紋時代の遺跡からは現在までに600匹を超える犬の骨が見つかっています。そしてその多くが埋葬され、犬がイノシシやシカ狩りに欠かせない縄紋人の伴侶として、大切に飼われていたことをうかがわせます。日本における最も古い出土例は、愛媛県の上黒岩遺跡から見つかった縄紋草創期(約10000年前)の犬です。縄紋犬の大きさは、体高が30~40センチメートルほどで、現在の柴犬とほぼ同じ大きさであったことが知られています。縄紋時代の中ごろ過ぎには、体高50センチメートルほどの紀州犬なみの中型犬がみられるようになります。また、骨格からするとスピッツ系(立ち耳、巻き尾、差し尾犬)の犬種であることは疑いないのですが、被毛の色や種類までは分かりません。
縄紋犬のうち、大きいものが秋田犬、小さいものが柴犬、その中間のものは紀州犬や北海道犬として、品種改良で固定されてきたと考えられてきました。ところが最近、血液中のたんぱく質に含まれる遺伝子を調べると、面白いことが分かってきたのです。
麻生大学の田名部雄一さんは、50犬種、4000頭の犬から採血し、Hb型、Gmo型遺伝子が含まれる割合を調べたのです。その結果、外見上よく似たスピッツ系の犬種間にも親戚関係の遠い、近いがあることが分かってきたのです。
結論からいうと、本州に分布する日本犬(秋田犬、紀州犬、甲斐犬、柴犬、四国犬など)は韓国の珍島犬や済州島犬と近い親戚関係にあり、北海道犬と琉球犬は朝鮮半島の犬と遠い親戚関係にあるという事実が判明したのです。また、北海道犬や琉球犬は、台湾在来犬、中国原産犬、バングラデシュ在来犬と近い関係にあり、もともと南方に起源をもつ犬種と推定されたのです。珍島犬や済州島犬は、エスキモー犬やサハリン在来犬と近く北方系の犬種なのです。
つまり、日本列島には当初南方系の犬が渡って来たのですが、いつかの時点で北方系の犬種が九州、本州、四国に新たに渡来し、その影響を日本犬の中に残したと考えられるのです。

写真:代表的な日本犬 柴犬

『広報ふじいでら』第307号 1994年12月号より

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