弥生時代は鉄器時代か(No.65)

更新日:2013年12月18日

復元した弥生時代の各種の石斧

「人類の歴史は、石器時代、青銅器時代、鉄器時代と変化すると記憶しているのですが、日本の弥生時代はどの時代区分に当たるのでしょうか」40代半ばと思われる男性からの質問です。
たしかに、エジプトやメソポタミア、中国など世界文明の中心地やその周辺地域では、石器時代、青銅器時代、鉄器時代という順序の歴史区分ができます。しかし、すべての地域がそのような経過をたどったわけではなかったのです。日本もその例外的な地域だったのです。
紀元前5世紀から4世紀のころ、水田稲作技術をはじめとして、さまざまな文物が日本にもたらされます。約1万年も続いた縄紋時代から弥生時代へと移り変わるのです。青銅器と鉄器は、ともにこのときに伝わったのです。青銅器は実用の道具としてではなく、もっぱら鏡や銅鐸のような宝器や儀式用の品物に使われました。これに対して鉄器は木工用の工具に始まり、農具や武器などの実用的な品物に使われたのです。
弥生時代の最初は、ごく少量の輸入鉄器が使われていただけで、道具の主力は石器だったのです。ところが、鉄器の生産が進み、弥生時代後期には、石器はほとんど姿を消すのです。弥生時代は石器時代から青銅器時代を経ることなく、鉄器時代へ移る過渡期だったのです。
ところで、鉄器が石器より優れている点は何でしょうか。刃物としての切れ味はどうでしょう。サヌカイトや黒曜石の薄い破片は、鉄の刃物より鋭い刃を作ることもできますが、耐久性は鉄器がはるかに勝っています。また、刃こぼれしたり折れた石器は捨てるしかありませんが、鉄器は使えなくなっても鋳直して再生することが可能なのです。
3世紀の中国の歴史書「魏志東夷伝弁辰条(ぎしとういでんべんしんのじょう)」には、朝鮮半島南部の地域に鉄が多く出て、「韓、注意1(ワイ)、倭みなしたがってこれをとる。諸市買うにみな鉄をもちい、中国の銭をもちうるがごとし」と記されています。鉄を求めて、弥生人がさかんに朝鮮半島南部に出かけていった様子が描かれています。
ただ、日本国内で鉄鉱石や砂鉄から鉄を生産するようになるのは、いつからかということについては、二つの意見が対立しています。一つはすでに弥生時代の後半に始まっていたという説で、二つ目は古墳時代を待たなければならないという説です。前者は弥生時代後期には、ほとんど石器を使うことがなくなり、鉄器が普及したことを根拠にしています。後者は鉄を精錬した炉や鉄のクズが見つかっているのは、今のところ古墳時代を上限としていることに基づいているのです。

注意1:ワイはさんずい辺に歳
写真:復元した弥生時代の各種の石斧

『広報ふじいでら』第315号 1995年8月号より

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