悪戦苦闘(No.14)

更新日:2013年12月19日

アリ山古墳の中央施設の鉄器埋納状態

工事主体者には、見つかった古墳の内部施設の重要性を説明し、調査への協力をお願いしました。調査期間が、最初の計画より2ヶ月も延びるという話の段になって、工事責任者のかたは途方に暮れた様子でした。しばらくして「しょうがないですな。まあ頑張って調査してください」とのややあきらめを含んだ返答をもらいました。
内部施設の存在が明らかになった日の夜に、北野耕平先生のご自宅に電話を入れました。電話口で、静かにわたしの状況報告を聞いておられた先生から「それは大変ですね、お役に立つかどうか分かりませんが、とりあえず明日にでも現地にうかがいましょう」とご返事をいただきました。先生の言葉によって調査の先行き不安が少し薄らいで、わたしはその夜ぐっすり眠ることができました。
鉄器の露出箇所を前にして、北野先生はしばらく注意深く観察をされました。かたわらのわたしに「ちょっと掘ってもいいですか」と尋ねられました。竹ベラと移植コテをお渡しすると先生は、鮮やかな手つきで土をはね、たちまち数本の鉄剣の輪郭を浮かび出させました。先生は、(1) この施設は、鉄剣の並び方からすると南北方向に作られていること (2) 施設は粘土や石を使わず、地面に穴を掘りその中に木箱(棺)を直接納める構造のものであろうこと (3) そしてこれから内部を掘り進めると大量の鉄製品が出土しそうなことを指摘されました。また、先生のご経験から、鉄器の大量出土の調査がいかに時間がかかり、根気のいる作業になるか、それに鉄器の保存処理の問題も早急に検討しておく必要があることをつけ加えられました。
北野先生のご指導に力を得て、わたしたちは、施設の輪郭を見つける作業に取りかかりました。施設は地面に穴を掘りくぼめて、またこれを埋め戻しているわけですから、掘って埋め戻した箇所とそうでない箇所とは、土の色や質の違いとなって現れてくるはずです。作業はちょうど地面にカンナをかけるように、丁寧に土をはぎ取って、土質や色の変化を注意深く観察しながら進めなくてはなりません。
この作業は2日間続けましたが、納得のいく輪郭をとらえることができませんでした。わたしたち調査関係者の間に焦りの空気が漂い始めました。

写真:アリ山古墳の中央施設の鉄器埋納状態(大阪大学/北野耕平提供)

『広報ふじいでら』第264号 1991年5月号より

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