保存処理をどうしよう(No.17)

更新日:2013年12月19日

たくさんの鉄製の農具、工具が出土した

鉄器はもともと細長い木箱に納められていたのですが、木箱はすでに腐ってなくなっていました。しかし、箱の中に満載された鉄器は、サビつきながらも残っていました。古墳から出土する鉄器は多かれ少なかれサビているのですが、西墓山古墳のサビかたは普通よりひどく思えました。
何はともあれ、鉄器の保存処理の専門家にこの状態を見ていただくことが先決となります。わたしたちは、修羅の保存処理で一躍有名になった、元興寺文化財研究所に連絡を取りました。鉄器の保存処理を担当しておられる、内田俊秀主任研究員が翌日現場に駆けつけてくれました。内田研究員は注意深く出土鉄器を観察された後、わたしたちに以下の説明をしてくださいました。
(1) 比較的大型の刀や剣の類は外側のサビがひどいが、中心部分には鉄素材が良く残っていて、今後急速にサビが進行する可能性がある。したがって、できるだけ早くサビの進行を食い止める処理が必要であること
(2) 小型の農工具類はサビが限界まで進行しており、鉄素材はほとんど残っていない。したがって、サビの進行には心配いらないが、放っておくとバラバラに壊れてしまうおそれがあること
(3) 元興寺文化財研究所では、現在処理を待っている鉄器が多く、西墓山古墳の処理を始めるまでに3年ほどかかる見込みであること。などでありました。
(1)、(2)はともかく(3)は困ったことになった、というのが正直な感想でした。そこでわたしたちは、奈良国立文化財研究所の保存工学研究室にこの窮状を訴えました。沢田正昭室長と肥塚隆保主任研究員が、公務をぬって現場に駆けつけてくれました。わたしたちの悩みは、鉄器の保存処理を担当する機関を見つけ、鉄器の取り上げをはじめとして、今後の調査方針をどうするかにありました。両先生と討議を重ね、次のような方法で今後の調査を進めることにしました。
A.西側の農工具類は、サビがひどく一点ずつ取り上げることは困難なので、現状のまま土ごと切り取り、そのまま保存処理にまわす。遺物の種類や数量については、X線写真撮影などで調査する。
B.東側の刀剣類はできるだけ単体で取り上げ、保存処理する。
C.保存処理の受入機関は沢田先生にご紹介いただく。
今後の方針が固まり、遺物の保存処理という難題に少し明るい見通しを得ることができました。

写真:たくさんの鉄製の農具、工具が出土した

『広報ふじいでら』第267号 1991年8月号より

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