新しい測量システム(No.18)

更新日:2017年07月08日

コンピュータを使った測量風景

遺物の保存処理に、ようやく見通しがついたのですが、もう一つ難問が控えていました。それは遺物の出土状態の測量図の作成でした。発掘調査では、遺物の出土状態を記録することが、必要条件なのです。 測量図は普通一定の間隔、たとえば1メートルごとに杭を打ち、そこに水糸を張り巡らせて正方形の基準区画を設けます。
次にその区画内に出土遺物を位置づけ、平面図や断面図を作成するという方法を取ります。
西墓山古墳の鉄器は、サビがひどく遺物の形すら見極めが難しいことに加え、鉄器の数が目測で数千点にのぼるのです。従来の測量方法では、何日かかるか分からないことが問題となりました。測量中は当然遺物を出土状態のまま置いておくことになります。鉄器の劣化は免れないでしょうし、盗難などの不測の事態もあるかもしれません。できる限り早くしかも正確な測量図を作成することが大きな課題となりました。
まず写真測量の方法を検討しました。この方法では、現場作業を2日程度の短時間で終わることができます。ところが撮影した写真から図面を起こし、再度現場で校正するという手順が必要になります。計算すると時間的な短縮はそれほど期待できないことが分かりました。
思案中に興味深いニュースが飛び込んできました。それは帝塚山大学考古学研究所の堅田直教授がコンピュータを使った新しい測量システムを開発されたという内容でした。早速、堅田先生に連絡をとりました。
翌日の午後には、数人の学生を伴って、堅田先生が現場にお見えくださいました。新しい測量システムは、現場で光波測距機を使い、測点を三次元でコンピュータに入力し、データを持ち帰りホストコンピュータによって解析し、適当な縮尺で自動図化機でアウトプットするというものなのです。
午後2時ごろから測量が始まりました。約1時間で鉄剣の1ブロックの測量が終了しました。従来の方法では考えられない速度です。現場入力データは、早速帝塚山大学のホストコンピュータによって解析され、自動図化機から見事な測点図が打ち出されたのです。
測量図の作成という難問に、新しい測量システムという心強い味方が現れたのです。

写真:コンピュータを使った測量風景

『広報ふじいでら』第268号 1991年9月号より

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