巨大な水鳥形埴輪(No.35)

更新日:2013年12月19日

水鳥形埴輪の出土状態

異様な土管状の埴輪が出土した地点を観察すると、葺石に使われる川原石が顔をのぞかせていました。掘り広げていくと、その川原石は斜面を覆って葺かれており、その面は、墳丘や堤に直交していることが分かったのです。
予想を越えた展開に、わたしたち調査関係者の間に緊張感が走りました。この時点で予測できたのは、濠を仕切る渡り土手のような施設か、濠の中に造られた島のようなものか、どちらかではないかということでした。いずれにしても全ぼうを明らかにする必要が生まれました。
2日後、この施設が濠の中にあたかも島のように造られたものであることが分かりました。それは一辺17メートル、高さ1.5メートル、斜面にはびっしりと川原石が葺かれ、四角い古墳のようでした。ただ南側は意識的にへこませて造られ、問題の土管状埴輪はここに立てられていたのです。
土管状の埴輪の正体は、頭の部分と水かきのついた脚が見つかって、ようやく突き止められました。水鳥形埴輪の頸部だったのです。この時点で気づいたことは、ほとんど同じ形をした埴輪が3体並べて立てられていたこと、そのうち2体は高さ1メートルを超える巨大なものであること、また、各部の造作が極めてリアルに作られていることなどでした。
早速、水鳥形埴輪の出土例を調べてみることにしました。水鳥形埴輪は、全国で100例余り出土していました。大きさでいえば、誉田御廟山古墳(応神陵)のものが最大クラスで、高さが60センチほどだったのです。城山の水鳥は、これをはるかに上回るのです。また、確実に城山より古いものは知られず、城山の水鳥が最古例になる可能性が強くなりました。つまり、城山の水鳥形埴輪は、最古にして最大という二重の一等賞を獲得したのです。しかも、写実性の点でも群を抜く作品に仕上げられていたのです。
復元された城山の水鳥形埴輪は、一躍埴輪界のスーパースターになり、全国で開催される展示会に引っ張りだこになりました。古墳や埴輪を扱った本の編者からは、必ずといっていいほど、写真の掲載依頼が届くようになりました。そして、ついにワシントンD・Cで開催された「古代の日本」展に出演するため、海を渡ることになったのです。

写真:水鳥形埴輪の出土状態

『広報ふじいでら』第285号 1993年2月号より

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