道明寺と国宝十一面観音

更新日:2013年12月22日

(左)巨大な塔心礎(右)国宝十一面観音菩薩立像(道明寺)

(左)巨大な塔心礎
(右)国宝十一面観音菩薩立像(道明寺)

菅原道真公ゆかりの道明寺は、数多くの伝承をもっています。道明寺と国宝十一面観音菩薩立像を紹介します。

道明寺は、山号を蓮土山と号し、真言宗の尼寺です。古代氏族土師氏の氏寺として、7世紀中葉に建立されたと考えられます。
江戸初期の『道明寺旧伽藍図』から、塔、金堂、講堂が南北に直線的に並ぶ四天王寺式の伽藍配置をとっていたことが知られます。建立当初は、道明寺天満宮の南方の参道付近に位置し、現在でも参道の西側に巨大な塔心礎が残っています。
戦国時代の兵火や江戸時代の洪水による荒廃で、道明寺天満宮の境内地に移り、さらに明治初年の神仏分離により天満宮と東高野街道を隔てた現在の地に移りました。
平安時代には、土師氏を祖先とする菅原道真公の伯母覚寿尼が土師寺に住んでいたことから、道真公は度々当寺を訪れたことが伝えられています。とくに道真公が都を離れ太宰府へ赴かれる際、一夜の暇を許され当寺に立ち寄られ覚寿尼に別れを告げ、
「鳴けばこそ 別れも憂けれ 鳥の音の なからん里の あかつきもかな」
との御歌を残し、九州へ赴かれたと伝えられています。
道真公の死後、土師寺を道明寺に改称し現在にいたっています。
中世には、奈良西大寺の中興の祖叡尊と深いつながりをもつことが知られています。当寺に所蔵される聖徳太子孝養立像の像内には、諸種真言等の納入品が見つかり、当時の信仰の一端を知る資料として本像とともに重要文化財に指定されています。
さて、ご本尊の十一面観音菩薩立像は、像高1メートル、檜の一本造です。表面は、彩色や漆箔にせず、頭髪、眼、唇等にわずかに絵具を挿しただけで、あとは木肌のまま仕上げた檀像彫刻です。
檀像とは、元来白檀のような香木を用いた彫像であり、香りを消滅させないために素地のまま仕上げているのが特徴です。しかしわが国では、香木の入手が容易でないことから良質の檜材を用いて代用する場合が多く、本像もその好例です。本像の表面は小豆色で光沢があるため見落としがちですが、素地の木肌は緻密で美しいことが特徴です。
頭上に十一面を頂き、胸を張り、両足を揃えて蓮花座上に直立する姿は、均整のとれた体躯と相まって温雅端正な形と姿を作り上げています。
お顔はふくよかで、しかも威厳があり、両眼には黒い石をはめ込んで生気のある眼を作り出しています。
肩から腕や腰にかかる天衣の緩やかな曲線や、腕を覆う天衣の柔らかな丸み、指のふくよかな肉付きは、檀像彫刻の技巧の妙味を感ずるとともに、厳しさが和らぎ、日本的な造形美をも感じさせてくれます。
本像の製作年代は、道真公生存年代と推定されていますが、未だ諸説があり判然としません。
本像は、彫技の精巧さと檀像彫刻中特筆すべき優品として、昭和27年国宝に指定されています。
毎月18日と25日には、厨子の扉が開かれ、本尊を拝観することができます。
教育広報『萌芽』第8号 平成6年2月号より

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