水鳥形埴輪のモデル探し2(No.114)

更新日:2013年12月20日

津堂城山古墳出土の水鳥形埴輪(小)

賀来孝代さんのことを忘れかけていたころ、1通の郵便物が届きました。賀来さんの見解が沢山の資料とともに送られてきたのです。
津堂城山古墳の大小の水鳥形埴輪についての賀来さんの結論は、水鳥の種類の違いを表しているということでした。その理由としては、
一、小の水鳥形埴輪がヒナ鳥を表しているのであれば、風切羽根が長く伸びているのはおかしい。
二、大型のガンカモ科の水鳥は、アジア大陸の亜寒帯で繁殖するので、日本でそのヒナにお目にかかる機会はない。
三、ほかの古墳でも作りはよく似ているのに、大きさの違う水鳥形埴輪が一つの古墳に持ち込まれている実例がある。この具体例として、千葉県正福寺1号墳を紹介されています。ここでは大きさの違う数種類の水鳥形埴輪が出土していて、そのうちにはマガモのオスの特徴であるカールした羽をもつものが含まれているとのことです。
津堂城山古墳の大小の水鳥形埴輪がハクチョウの親子ではないとすると、モデルとなった鳥の種類はなんだろうということになります。賀来さんはこの疑問に次のような回答を用意しておられました。
小の水鳥形埴輪の大きさや形からすると、カモではなく、やや大型のガンの一種ではないか。より絞り込めば、今日の日本では見られなくなったハクガンではないか。
賀来さんのご見解には大いにうなずかされました。特に理由の一と二には感服しました。ハクチョウのヒナは日本で見ることはないとは、盲点を突かれた思いです。言われてしまえば、何のことはないのですが、でもこれがなかなか気づかないのです。
ここまで見事に解釈されると、少しケチをつけてみたくなります。賀来さんは津堂城山古墳の水鳥形埴輪が、モデルの大きさや形を忠実に模していることを前提に議論を組み立てておられます。しかし、埴輪の製作者はモデルにデフォルメ(誇張と省略)を加えて作品を仕上げていきます。
埴輪作りにあっては、ときに現実に存在しないものをつけ加えたりもします。家形埴輪や器財埴輪によく見る鰭(ひれ)形の飾りはその一例だと思います。何が言いたいかというと、埴輪製作者が現実に見ていないものを作品化することもありうるのではないかと主張したいのです。とすると、津堂城山古墳の小の水鳥形埴輪がハクチョウのヒナを表わした可能性も少しは残るのではないでしょうか。
自分で言っておいてなんなんですが、やっぱり、へ理屈に聞こえます。賀来さん、まいりました。そしてありがとうござました。

写真:津堂城山古墳出土の水鳥形埴輪(小)

『広報ふじいでら』第364号 1999年9月号より

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