大阪狭山市立郷土資料館を訪ねて2(No.90)

更新日:2017年07月08日

姿を現した外濠の斜面

昭和55年の夏、津堂城山古墳の周庭帯で大阪府教育委員会が発掘調査を実施することになりました。実はこの調査の数ヵ月前、小規模な発掘調査が行なわれていたのです。
このときの調査で、どうも周庭帯のほぼ中央が、凹地状態になっている、ことによると二重目の濠があるのではという観測があったのです。
昭和55年の夏の調査は、後円部の北西側に長さ15メートルのトレンチ4本をうがつ計画でした。想定されるように、周庭帯の中央に二重目の濠があるとすれば、このトレンチで確認されるはずだったのです。
表土を30センチメートルほどはぎ取ると、各トレンチの西半分に真っ黒な土が現われたのです。4本のトレンチの黒色土のポイントをつなぎ合わせると、後円部の同心円の線上にぴったり重なったのです。この調査を担当されていた石神怡さんは、このとき鳥肌がたったことを覚えているといいます。
真っ黒な土を下げていきます。外濠の斜面が現われました。斜面は川原石を使って葺石が施されています。約2メートル掘り下げたところで、濠底に達しました。濠底の砂礫層からは、まるで水道管を破ったように湧き水が吹き上げます。葺石の上面からは、巨大な形象埴輪も出ていました。見事に外濠が姿を現わしたのです。
調査成果の新聞発表と現地説明会の準備をしている最中に、末永雅雄さんが発掘現場を見に来られるというニュースが入りました。石神さんから連絡を受けて、わたしも現地に出向きました。末永さんがどのようなご意見を述べられるのか興味があったのです。
ワゴン車が現場に横付けされました。同志社大学の森浩一さん、橿原考古学研究所の石部正志さん・宮川徏(すすむ)さん、そして末永さんが降り立ちました。石神さんの説明に、先生がたは耳を傾けられていました。一通りの説明が終わって、先生がたからいろいろな質問が石神さんに飛びました。それまでだまって聞いておられた末永さんが発言されました。「こんなふうになっていたのか。長生きはするもんや。いいものをみせてもらった。石神さんありがとう」
周庭帯は字のごとくあまり高くない平地が、濠の外側を帯状に取り巻いている、というのが末永さんのイメージだったようです。イメージが覆ったことを楽しんでおられるようなご様子に、真摯な研究者の在り方を見たように思いました。
「末永雅雄先生生誕百年記念:古墳研究の歩み」は大阪狭山市立郷土資料館で10月10日から11月24日まで開催されています。入館は無料です。

写真:姿を現した外濠の斜面(大阪府教育委員会提供)

『広報ふじいでら』第340号 1997年9月号より

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