石棺の蓋(No.27)

更新日:2013年12月19日

出土した遺物(1)腕輪形石製品(1~3)、滑石製模造品(4~7)、玉類(8~26)、鉄鏃(27)、甲冑片(28・29)

Bさんたちは、遅い昼飯にしました。まだ3月の中ごろなのに日差しは強く、木陰に涼を求めました。竹の皮に包んだ握り飯は、いつもより1つ多く入っていました。おっかあの心遣いに感謝しながら、Bさんは握り飯をぺろりと平らげました。
「なあ、昼からどないするん」先の段取りが気になってしかたがないC君がBさんに迫りました。「いま考えているんや。やいやい言いな」Bさんは思案していました。あの赤い部屋の中に納められた、奇怪な紋様が彫り込まれた、かまぼこ石を取らないと、全体の内容がわからない。あの大石はどでかいし、中からどんなものが出てくるか興味もあるが、何かやってはならないことをしているようでそら恐ろしい気もする。
ぐずぐず考えをめぐらせていたBさんのまわりに、村人たちが集まり始めました。「おっちゃん、昼からの段取りを皆に言うてや」C君に促されて、Bさんが指示をしました。「とりあえず、残りの6枚の天井石を横へずらしてくれ。手足を挟まんよう気つけてや」
午前中の作業で要領を得た村人たちは、段取りよく大石の移動に取りかかりました。春の夕暮れは早く、3石の移動が完了したときには、手元が暗くなってきました。Bさんは安全を考えて、作業を明日に持ち越すことにしました。城山のてっぺんからは、きれいな夕焼けが見えました。
翌日は快晴で作業は順調に進み、夕方には残りの天井石、すべて取り去ることができました。部屋中に納められた、かまぼこ石の全体が目の前に現れました。部屋の大きさは、長さが6メートル余り、幅が2メートル少しありました。かまぼこ石は、長さ3.5メートル弱、幅1.5メートル強の大きさで、ふっくらした上面には、亀の甲羅を連想させるような彫り込み細工が施されていました。さらに都合よくといおうか何といおうか、このかまぼこ石の各辺に2つずつ、合計8つの作りつけの突起までついていました。縄をかけて、この大石を持ち上げることができそうです。
夕暮れが迫るなか、Bさんはしげしげとかまぼこ石を観察しました。かまぼこ石の下は、土に埋もれてよく見えないけれど、どうもこれは板石を6枚組み合わせた、巨大な石の棺に間違いないと思いました。それにしても昔の人はすごい仕事をしたもんだ。いくら見ていても、見飽きることがありませんでした。城山からの家路は、すでに夜道になっていました。

図:出土した遺物(1)
腕輪形石製品(1~3)、滑石製模造品(4~7)、玉類(8~26)、鉄鏃(27)、甲冑片(28・29)(藤井利章「津堂城山古墳の研究」『藤井寺市史紀要』第三集1982年より)

『広報ふじいでら』第277号 1992年6月号より

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