石棺の中を掘る(No.29)

更新日:2013年12月19日

城山古墳出土遺物一覧表

Bさんの指先をたどると、赤黒い鉄サビが細長く固まっている箇所がありました。ひいき目に見ると、Bさんの言うように刀のようにも見えました。「刀に見えんこともないけど、ほんまかいな」C君はまだ納得していないようでした。「明日、掘ったらはっきりするこっちゃ」Bさんは自信ありげにC君に言いました。実はそれほど自信があったわけではなかったのですが。
翌朝、村人たちは、思い思いの小道具をもって、城山のてっぺんに集合しました。Bさんが村人を前に注意事項を伝えました。「掘り手はお棺の中と、お棺のまわりの2班に分ける。出てきたものは、しょうもないものと思っても捨てたりしないで、1ヶ所に集めてくれ。それから、ちょっと見えてるように、鉄でできた品物が出てきそうや。壊さんように掘り出してくれ。小さいものも埋まってるかもしれへんので、見落とさんようにな。それだけや、ほんじゃ、皆頼みます」村人たちはいつになく神妙にBさんの話を聞いていました。
昨日、Bさんが刀だと言い出した部分は、手先の器用なことを自他共に認める、Hさんに掘ってもらうことにしました。慎重に土をはねていくと、みるみる刀らしい輪郭が現れました。そして奇妙にも柄の部分は、丸く輪になっていました。C君はその様子を見ていましたが、Bさんの表情にも目をやりました。得意げなBさんを予想したのですが、意外にもそこには、今までになく緊張したBさんの姿がありました。
土の中からいろいろな品物が出始めました。刀は最初の1本だけではなく、次々と出てきました。サビてもろくなっているので、うかつに持ち上げると壊れてしまいます。BさんはC君に頼んで、太めのもうそう竹を切ってきてもらうことにしました。これを二つに縦割りして刀を納めようと考えたのです。これはなかなかのグッド・アイデアでした。
緑青の浮いた銅製品は、村人の興味を大いに刺激しました。この銅製品は、直径20センチ足らずの円盤状をしていました。その片面には、何やら奇怪で複雑な紋様が彫り込まれ、中央にはひもかけ用と思われる突起も作られていました。ところが、反対の面は、つるつるで一切紋様はなかったのです。つるつる面はよく見ると、凸面鏡のようなそりがあることをC君が指摘しました。
いままでに見たことのない品物が続々と出土し、村人たちの興奮は最高潮に達していました。しかし、Bさんだけはこの先の段取りを決めあぐねて、頭の中がぐちゃぐちゃになりかけていました。

表:城山古墳出土遺物一覧表(藤井利章「津堂城山古墳の研究」『藤井寺市史紀要』第三集1982年より)

『広報ふじいでら』第279号 1992年8月号より

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