水鳥形埴輪と船形埴輪(No.37)

更新日:2013年12月19日

水鳥形埴輪が出土した方墳状施設

水鳥形埴輪のモデル探しの次に調べておきたかったのは、全国で水鳥形埴輪がどこから、どれくらい出土しているのか、という問題です。
各地の発掘調査報告書や博物館の展示目録などを、ひっくり返して探しました。その結果、59ヶ所の遺跡(古墳)から99体が出土した例を確認することができました。これらの水鳥形埴輪を一覧表にしてみると、いくつかの面白い傾向が分かりました。その一つは、出土遺跡は中九州から北関東におよんでいて、特別の地域に集中することはないこと。二つ目は、古墳の大きさや形にとらわれることなく、使われていること。その三は、前期古墳に使われた確実な例はなく、城山が今のところ最古の例になり、その後6世紀まで使われていること、などです。
数例に過ぎないのですが、出土した状態がはっきりしているものでは、造出しに据えられたものが目立つことです。
この集計をしたのは、10年近くも前のことなので、今では、出土数が1.5倍、ことによると2倍に上っていると予測されます。しかし、この一般的な傾向は、今もほとんど変わっていないように思います。
ここで水鳥形埴輪と同じように、出土数の少ない船形埴輪と比較してみましょう。船形埴輪は全国で20数例が知られていますが、その大半は近畿、しかも大阪府と奈良県に集中しています。さらに出土した古墳は、円墳や方墳といった小型の古墳に限られるという特色をもっています。船形埴輪は、古墳に葬られた人の社会的な役割と深い関係を暗示しているように思うのです。
一方、水鳥形埴輪には、船形埴輪のような特殊性は見当たりません。唯一の特殊な点は、家形や盾形、あるいはきぬがさ(飾りのついたパラソル)形埴輪に比べると、出土数が極端に少ないことです。しかしこれは、確実な発掘調査の事例を参考にすると、一古墳あたりの使用点数の少なさに原因が求められそうなのです。
つまり、水鳥形埴輪は古墳上で執り行われる葬送の儀式に、欠くべからざる重要な埴輪だったことが想像されてくるのです。
ヤマトタケルの「白鳥伝説」と、城山古墳の水鳥形埴輪をストレートに結びつけることはできませんが、少なくとも、両者は往時の死生観をうかがうことのできる、貴重な資料であることに間違いないと思うのですが。

写真:水鳥形埴輪が出土した方墳状施設

『広報ふじいでら』第287号 1993年4月号より

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