修羅と土師氏(No.143)

更新日:2013年12月19日

藤井寺市民まつりのシュラ曳き競争

大修羅の魅力の秘密がその大きさや分かりやすさのほかに何かあるのではないかとずっと考えてきました。
なかなか見つからなかったのですが、ひょんなことでヒントがえられたのです。
それは、道明寺在住の青年とのなにげない会話の中にありました。青年は「修羅は好きやけど、それ以上になんか感じるんや」と言うのです。
「なんか」とは何なんだろう。わたしには結構重い響きを含んで聞こえました。「なんか」に修羅の魅力の秘密が潜んでいるように思ったのです。
まず修羅と土師の里遺跡の関係に目を向けてみましょう。修羅が出土した場所は、土師の里遺跡のど真ん中にある三ツ塚古墳の濠からでした。土師の里遺跡は古墳造りに活躍した豪族土師氏の本拠地として知られています。修羅の使われた年代には5世紀説と7世紀説があってどちらとも決めがたい状況にありますが、いずれにしても土師の里遺跡に本拠をおく土師氏が古墳造りに勤しんでいた時代であります。ということは、修羅は土師氏が古墳造りの工程の中で使っていた可能性がすこぶる高いのです。
土師の里遺跡は、古墳時代以降連綿と集落が営まれたことが発掘調査でも確かめられています。つまり、土師氏のムラは古墳時代から現代にまでつながっているのです。今、道明寺一帯に暮らす人々のうち、何パーセントかは定かではありませんが、土師氏の後裔が含まれているのです。
市民まつりの会場で出会った「修羅曳きはおれの天職」と豪語する道明寺在住の何人かの青年や、修羅の里帰りに情熱を燃やす医師に話をうかがったことがあります。そこには異口同音の表現がありました。それは冒頭で紹介した青年と同じ「なんか感じる」ということなのです。
それは修羅に染み込んだ先祖の汗と涙の匂いを感じるということなのかもしれません。土師氏を先祖に持たないわたしには難解この上ないところですが、そんなこともあるのかなと最近は思っています。
修羅と先祖の所為を濃厚にダブらせる人はそう多くはないと思いますが、多少薄めた感覚が藤井寺市民にもあるのではないでしょうか。修羅を介して古代を身近かに感じるということでしょう。
修羅の魅力は、そのずばぬけた大きさ、理屈抜きの分かりやすさ、時間の壁を突き破って古代人のぬくもりが感じられる体感性があいまって醸成されたものなのでしょう。
藤井寺市内での発掘調査は今も進行中ですし、これからも進んでいきます。そこからは珍しい遺構や遺物の出土があるでしょう。ひょっとすると、日本史を書き替えるような発見があるかもしれません。これまでの調査成果をまとめた新しい研究が発表されることも期待されます。しかし、修羅を超える魅力のある遺物が出土するかといえば、「そりゃ、なかなか難しいことですなあ」という答えが正直なところです。(つづく)

写真:藤井寺市民まつりのシュラ曳き競争
『広報ふじいでら』第393号 2002年2月号より

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