プロローグ(ふじいでら歴史紀行24)

更新日:2016年03月31日

古市古墳群は、堺市百舌鳥古墳群とともに平成20年9月26日、世界遺産暫定一覧表への記載が適当と評価されました。これによって藤井寺市と羽曳野市にまたがる古市古墳群が、世界遺産記載に向け大きな一歩を踏み出すこととなりました。今回から6回にわたり、百舌鳥・古市古墳群の世界遺産登録への取り組みについてお話していきたいと思います。

古市古墳群の世界遺産への登録運動の動きは、平成18年12月、堺市教育委員会文化財課長I氏の一本の電話によって幕が開きました。

堺市では、11月に百舌鳥古墳群をアピールするために、中国・韓国・日本を代表する研究者を一同に会して「東アジアの巨大古墳シンポジウム」が開催された直後のことでした。
「ご無沙汰しております。どないしはりましたん。」と文化財保護課A参事が受け答えする横で、私はばたばたと仕事に追われていたことを思い出します。

電話の内容は、百舌鳥古墳群と古市古墳群のことで世界遺産と関連して12月下旬に藤井寺市と協議したいとのことでした。

後日の協議では、百舌鳥古墳群を世界遺産登録に向けて堺市が単独で活動しているのだが、文化庁・大阪府より同等の規模・内容である古市古墳群を含めて考えなければならないとの意見を受け、藤井寺・羽曳野両市の意向を確認したいとのことでした。

A参事は早速、堺市との協議内容を整理し、翌日大阪府教育委員会から情報を得るために大阪府庁へと脚を運びました。年末に飛び込んできた「世界遺産」とはなんだろうと考えたとき、私の浅薄な頭には「空中の楼閣」マチュ・ピチュの姿が浮かびました。私にとって世界遺産はまさに「空中の楼閣」のように高くそびえたつ崇高な遺産でした。
世界遺産は、人類共有の財産として世界各地の文化財や自然環境を保護することを目的としています。

1972年11月、第17回ユネスコ総会で採択された「世界の文化遺産及び自然遺産の保護に関する条約」(世界遺産条約)に基づいて登録されるもので、2008年7月現在、文化遺産679、自然遺産174、複合遺産25(合計878)が世界遺産として登録されています。

日本では、平成4年に条約を締結し、翌5年、我が国から初めて、「法隆寺地域の仏教建造物」および「姫路城」の2件が文化遺産として、「白神山地」および「屋久島」の2件が自然遺産として、世界遺産一覧表に記載されました。その後平成20年までに文化遺産11件、自然遺産3件の計14件が世界遺産一覧表に記載されています。

この世界遺産の話は、A参事から即座に市長へと協議されました。市長は「古市古墳群が世界遺産登録へ向けて動き出すことは歓迎すべきこと」と藤井寺市における古市古墳群世界遺産への道の幕が切って落とされました。

世界遺産に登録されることによって、古市古墳群は世界的に価値が認められることとなり、知名度が上がることが考えられるとともに訪問者の増加も考えられます。しかしながら世界遺産の本来の目的は、こうした観光化が目的ではなく、国際協力を通じた保護のもと、国境を越え今日に生きる世界のすべての人びとが共有し、次の世代に受け継いでいくためのものです。

百舌鳥・古市古墳群を世界遺産へ登録するためには、まだまだいくつもの難題が待ち構えています。

百舌鳥古墳群(堺市提供)

『広報ふじいでら』第476号 2009年1月号より

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教育委員会事務局教育部 文化財保護課
〒583-8583
大阪府藤井寺市岡1丁目1番1号 市役所6階65番窓口
電話番号:072-939-1111 (代表)
072-939-1419 (文化財担当、世界遺産担当)
ファックス番号:072-952-9507

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