けつ状耳飾りの謎(No.121)
更新日:2013年12月18日
人骨出土地一帯の発掘権を得た大阪毎日新聞社社長の本山彦一さんは、国府遺跡の全貌をつかむためには、より大規模な発掘調査が必要だと考えました。本山さんが調査を託したのは、大阪医科大学(現大阪大学)の大串菊太郎さんでした。
大正6年(1917年)10月、大串さんの発掘調査が濱田耕作さんのB地点南西側で開始されました。大串さんは翌大正7年4月にも追加調査を行い、多大の成果をあげることができました。
成果のまず第一は、34体(のちに再調査した京都大学の池田次郎さんが36体と訂正)もの人骨を見つけたことです。濱田さん、鳥居さんの発掘による人骨が合計8体でしたので、一挙に人骨資料が増えて石器時代人をめぐる正確で活発な議論の展開が期待できるようになりました。
第二の成果は、けつ状耳飾りの謎が解かれたことです。けつ状耳飾りはドーナツを押しつぶして扁平にし、一端に切れ目を入れたような形をしています。滑石や蛇紋岩などの緑色系の美しい石が選ばれて作られました。耳たぶに開けた孔に切れ目から差し込み耳飾りとしました。今のピアスの原形のようなものと考えてください。藤井寺市の市章は、けつ状耳飾りと前方後円墳をモデルにしていることをご存知でしょうか。
このけつ状耳飾りが国府遺跡の発掘調査で人骨の頭がい両脇から1対になって見つかったのです。それまでけつ状耳飾りは、用途や時代のはっきりしない遺物だったのですが、石器時代の耳飾りだったことが分かったのです。けつ状耳飾りは大串さんの調査で6対、12個も出土し、大きな話題となりました。なお、けつ状耳飾りのけつとは中国の玉器のけつのことで、その形が似ていることで命名されたものです。濱田耕作さんは、国府遺跡のけつ状耳飾りは中国から輸入された可能性があることを指摘しています。6対、12個のけつ状耳飾りは、現在、関西大学博物館に3対、6個、京都大学総合博物館に2対、4個、道明寺天満宮に1対、2個が保管・展示されています。
第三の成果は、国府遺跡から出土する人骨には、時期の異なるものが混じっていることが分かったことです。大串さんはけつ状耳飾りをもつ人骨には抜歯がないことに注目し、抜歯を伴う古い一群がまず墓地をつくり、後にけつ状耳飾りをもつ新しい一群が同じ場所を墓地としたと考えました。現在の知見からすると、新古の理解は逆ですが、同じ石器時代のなかで新古の異なる時期の人骨が混ざっていることを指摘した点は大きく評価されます。ただ、残念なことは、大串さんの調査の全容が報告されることがなかったことです。(つづく)
写真:けつ状耳飾り装着頭骨の出土状況模型とけつ状耳飾り(関西大学博物館『博物館資料目録』1998年より)
『広報ふじいでら』第371号 2000年4月号より
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