大阪府立近つ飛鳥博物館(No.88)
更新日:2013年12月20日
最近の文化財調査には、予備的な地中探査にはじまり、報告書の作成にいたるまで、最新の科学的な手法が随所に取り入られてきました。
このほど大阪府立近つ飛鳥博物館では、『古墳の科学捜査』というユニークな夏季企画展を開催します。近つ飛鳥博物館は河南町東山にあり、開館当初、最寄り駅からのアクセスの不便さから利用者数が心配されましたが、平成5年度に開設以来、年間20万人を前後する入館者で、博物館らしからぬにぎわいをみせています。
その要因の一つには特別展や企画展、国際シンポジウムの開催からコンサート、バードウオッチングにいたるまで、まことに多彩なイベントが行なわれていることにあると思います。近つ飛鳥博物館に行けば、いつも何か面白い催しが楽しめるという雰囲気が、人気の秘密なのでしょう。こういった活発な博物館活動は学芸員をはじめとする館のスタッフの並々ならぬ努力によって支えられているのです。
さて、今回の企画展では、兵庫県加古川市の行者塚(ぎょうじゃづか)古墳の発掘調査を主題に、現代科学を駆使して古墳の実態にせまるプロセスが分かりやすく解説されています。「科学捜査」と銘打ったコーナーでは、藤井寺市のいくつもの資料が出品されていますので、見逃さないでください。
科学捜査・(予備調査)のパートでは、津堂城山古墳のレーダー探査のデータが、科学捜査・(発掘調査)ではコンピュータを使った野中古墳の4万個におよぶ臼玉の出土状況図が、また、科学捜査・(遺構・遺物の保存)では津堂城山古墳出土の水鳥形埴輪の実物と精巧なレプリカの比較した展示といった具合です。
考古学にコンピュータを使った調査システムをどのように作り上げるかは、今日的な大きな課題です。しかし、実際のところは、まだ試行錯誤の段階にあります。藤井寺市においてもすでに発掘現場での測量や報告書の作成にはコンピュータが導入され、精度の向上とスピードアップに威力を発揮しています。しかし、調査全体のシステム化はまだまだ未完成なのです。
今回の企画展では、現代の発掘調査にコンピュータをはじめとする科学的機器がどのように活用され、新しい調査成果がどのように生み出されているかを具体的に知ることができます。
このユニークな企画展は、平成9年7月8日から9月7日まで開催されています。夏休みの1日を『古墳の科学捜査』にお付き合いしてみませんか。
写真:津堂城山古墳の濠の地中レーダー調査図
『広報ふじいでら』第338号 1997年7月号より
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