登録への課題(ふじいでら歴史紀行28)

更新日:2016年03月31日

「うーん、どないなっとるんや」

平成20年9月、堺市の歴史文化都市推進室のF室長は、めまぐるしく変わる文化庁の動向にやきもきしていた。百舌鳥・古市古墳群の世界遺産登録へ文化庁に提案書を提出してから一年が経とうとしていた。F室長は、世界遺産登録の最初の難関である暫定リストへの記載の可否を探ろうとしているところだった。文化庁関係者のガードは固く、確定した内容が伝わってこない。それどころか、「暫定リストに漏れるのでは」との雲行きの怪しい話も聞こえてくる。

「資産価値としては世界最高水準のはずだ」と確信していたF室長もめまぐるしく変わる話に気をもんでいた。暫定リスト登載の記者発表直前に文化庁から資料が送られてきた。「やったー!」と歓声のあがる歴史文化都市推進室の傍らで、F室長は、「取りあえず良かった…。」と憔悴した顔を上げた。

平成19年度に提案された世界遺産候補は32件、その内平成18年度から引き続いて提案された資産が19件ありました。平成20年9月26日、世界遺産暫定一覧表への記載が適当と評価された5件の資産の内、4件は、平成18年度から継続提案された資産でした。平成19年度に新たに提案された資産で記載が適当と評価された資産は百舌鳥・古市古墳群の1件だけという厳しい結果でした。同時に、百舌鳥・古市古墳群の資産自体の評価は、他の資産と比較して非常に高いことが証明されました。
ただ百舌鳥・古市古墳群を世界遺産へ登録するためのハードルも具体的な形となってきました。百舌鳥・古市古墳群は宮内庁が管理する陵墓を主要な構成資産としていることから、文化庁は、世界遺産に係る評価や管理に対応し得るかという基本的な条件に関する課題が存在しているとして、世界遺産の構成資産としての適切な保存管理をどのような形で担保するかについての考え方の整理が必要であるとの課題が与えられました。

また世界遺産一覧表への記載に係る審査あるいは記載後の世界遺産としての保存管理状況審査などが陵墓の特性を十分に尊重して行われることが必要であるとされました。

世界文化遺産の構成資産は、これまでは文化庁の指定による保護を受けていることが前提となっていました。そのため国指定史跡ではない宮内庁の陵墓の管理などが問題となっていました。しかしながら今回の発表は宮内庁の陵墓の管理と特性を尊重しつつ世界遺産登録へ向けて調整を図っていくといったこれまでにない一歩踏み込んだ内容となっていました。

こうした課題とともに百舌鳥・古市古墳群の最もおおきな問題は、百舌鳥・古市古墳群が他の資産と比較して著しく都市化が進んでいることでした。古市古墳群においては、昭和40年代後半より急速な宅地化が進み、古墳を取り囲むように住宅が立ち並んでいます。

住宅の中に囲まれるように緑地を形成する古墳や広大な敷地が守られている陵墓を保護し、都市と古墳が共生できる美しい景観を形成していくことが今後のまちづくりの大きな課題となっていくことでしょう。

古市古墳群

『広報ふじいでら』第480号 2009年5月号より

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