兵庫県立考古学博物館館長「和田晴吾」先生から、世界遺産「百舌鳥・古市古墳群」登録2周年記念メッセージをいただきました
更新日:2021年07月06日
令和元年7月6日に「百舌鳥・古市古墳群」が世界遺産に登録されました。登録2周年を記念して、立命館大学文学部名誉教授・特任教授であり、兵庫県立考古学博物館館長でもある和田晴吾先生からメッセージをいただきました。

和田 晴吾(わだ せいご)先生からのメッセージ
百舌鳥・古市古墳群が世界文化遺産になって2年がたちます。大都会の周辺に驚くほど巨大な前方後円墳や帆立貝墳、円墳、方墳など大小多様な形の古墳が群集している、すばらしい遺跡ですが、世界遺産に採択されたのは、市民の皆さんほか多くの方々の支持と努力のたまものと感謝しています。先人が残してくれた歴史の宝物です。
両古墳群は5世紀頃にあったヤマト王権の大王(後の天皇)一族を葬ったものです。全国各地の古墳に多様な形と規模があるのは、埋葬された人の王権内における政治的身分が反映されたためと考えられます。日本列島で米づくりが始まったのは、古墳より千年以上も前のことですが、長い時を経て、列島の農耕社会は成熟し、国家の形成に向けて動きだします。百舌鳥・古市古墳群はまさにそのまっただ中で造られたのです。
どの古墳も今は緑に覆われていますが、当初は墳丘の表面に葺石や埴輪で一つの世界が表現されました。私は、その世界は、死者の魂が赴き生前と同じように暮らすと信じられていた他界(あの世)であると考えています。家や器財の埴輪は死者が使うもの、人や動物の埴輪は死者に奉仕するものだったのです。仏教伝来前の人びとにも祖先信仰に基づく明確な他界観があり、それを目に目える形で表現したのです。古墳は政治的産物であるとともに、宗教的産物なのです。その思想を表現するのに使われた埴輪は日本独特のもので、素朴ですが世界に誇れる造形物だと思っています。
皆さんとともに末永く見まもり上手に活用していきたいと思います。
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