埴輪は年代の物差し

ずらっと並んで立てられた円筒埴輪(岡古墳)

ずらっと並んで立てられた円筒埴輪(岡古墳)

埴輪の話の最初に埴輪の代表は、円筒埴輪なのだということを申し上げました。今回はこのことについて、もう少し詳しくご説明してみたいと思います。
円筒埴輪の起源は、岡山大学の近藤義郎元教授らの研究によって、弥生時代の特殊器台(きだい)形土器にあるということが明らかにされました。言葉を換えると、埴輪の発生とは円筒埴輪の発生にほかならないのです。また、古墳時代後期になると埴輪の使用は衰退していくのですが、最後まで使われるのは円筒埴輪であることが知られています。つまり、古墳時代をとおして最も普及した埴輪は、動物埴輪でもなく、家形埴輪でもなく、円筒埴輪だったのです。
円筒埴輪の研究は、ここ15年ほどで急速に進歩しました。その一つは古墳の造られた年代を計る物差しに円筒埴輪が活用できないかという問題意識から出発しました。ご承知かと思いますが、巨大な前方後円墳のほとんどは、陵墓(りょうぼ)つまり天皇家のお墓として管理されていて、立ち入ることができません。まして発掘調査などは認められません。したがって、その古墳に関する考古学的な情報は極端に制限されるわけです。しかし、現在陵墓として管理されている範囲は、その古墳が造られた当時より狭く設定されているケースが多くあり、外周部の発掘調査によってその古墳に使われた円筒埴輪が出土することがあります。この円筒埴輪の年代を知ることができれば、巨大な古墳の構築年代もかなりの精度で絞り込むことが可能となるのです。
この課題に主導的な役割を果たされたのが、古代学研究所の川西宏幸教授です。教授は日本考古学が伝統的に培ってきた土器編年の手法を円筒埴輪編年に応用されたのです。教授は、まずその製作技法に着目され、特殊器台形埴輪の流れをくむ丁寧な作りの埴輪を出発点として、古墳の巨大化とともに大量消費に即応した画一的な形態へ変化し、最後には簡略・小型化した退化型式で終わるという変遷の道筋を明らかにしました。
川西教授は全国の円筒埴輪を対象にして、その変遷が五段階に区分できること、さらにその成果をすでに知られていた副葬品とのクロスチェックをし、編年の精度を高めました。こうしてできあがった古墳の編年表は、陵墓に治定されている巨大古墳が網羅されるという画期的な内容となったのです。

教育広報『萌芽』第5号:平成4年7月号より

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